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June

水無月

長雨の合間、かすかな陽光が木々にやどる露に、きらきらといのちの輝きを伝えている。あてどのない時間が光の中に吸い込まれて行くような一刻、庭は物語を作る。 庭とは建物と建物の間の小さな空間に作られた庭、或はつぼねの前にあった庭からとも謂われるが、通りすがりに、それとなく視野に入る小さな庭は思いがけない広がりを見せる。建て込んだ細長い家に住む京都の町家の人々の光を求める智恵が、これを中庭として家の中に取り込み、風の通り路としてもまことに都合が良い。家という閉鎖された空間の中に自然を持ち込み一体化させて、その微細な一角を切り取り、囲んで、単純化する事でより明確に自然を意識させているというべきか。 吾家の坪庭は井筒を象徴的に扱う事で視点をしぼっているが、それを花入れに見立て、季々の花を楽しんでいる。梅雨時、暮れなずむ薄い光の中で、水面にゆらめく灯籠の火影と花達はひそやかな息遣いで呼応しているように見える。

Essay on June
*This essay cannot be translated
because it is
highly dependent on
Japanese cultural context.

文 佐藤年 (俵屋当主)初出 『婦人画報』
1993年6月号 「折節の韻律」

Text by Toshi Satow (Proprietor of Tawaraya)First published in Fujingaho,
June 1993 issue, "Rhythms of the Seasons"