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October

神無月

灯火

雪明かり、月明かり、翳る明かり……。自然の移り変りや時間の推移に、絶えず心を添わせていた日本人は、その住まい方に自然の明かりを享受し、人工の明かりを用いて美をも構成した。天井からの光源をみなかった時代には、明かりが綾なす陰翳の濃淡は余情を醸しだした。陰が光を捉えた。昨今のあまりにも平淡な照明は、光そのものの存在すら気付かせない。照明が機能のみを追求した結果だろう。 黄昏れてともす行燈の明かりが、薄闇の中に滲み出るような光の輪を広げると、光は闇にとけ込んでいく。秋の夜長、こんな明かりの下でなら、疎かになりがちな便りも、一言と書く気になるのは、拙筆もなんとなく味わい深くみえるからだろうか。秋の夜の虫の音と灯火は、"長き手紙を書きたき夕"とうたい残した塚木と同じ思いで、如何お暮しですか、と問いたくなる人恋しい情感をもたらす。もっとも、それが読まれるのは明かるい光の中だということ迄は計算にないから、浅はかなのだが……。

Essay on October
*This essay cannot be translated
because it is
highly dependent on
Japanese cultural context.

文 佐藤年 (俵屋当主)初出 『婦人画報』
1993年10月号 「折節の韻律」

Text by Toshi Satow (Proprietor of Tawaraya)First published in Fujingaho,
October 1993 issue, "Rhythms of the Seasons"